2007年02月27日

陽だまりの君 49

どうして、この男はこうなのだろうか?
河上は大きく嘆息を吐きつつ、目の前で罵詈雑言を繰り返しながら仕事に勤しんでいる高杉をちらりと横目で眺めた。
その口汚い罵りは、勿論友人である坂田銀時に対してのものだ。
高杉と坂田銀時は幼い頃からの学友で、境遇も性格も似た部分のある彼らは、存外うまくやってきていたのに、今ではどうだ。
一人の、しかも男を取り合ってこの状態というのは、あまりにも情けなさ過ぎないだろうか?近い将来、この国の経済を担う企業のトップに立つであろうこの二人がこんなでは、この国の将来は決して明るくない。
高杉は小さな頃から利発な子供だった。自分の分というものを弁えており、無茶なことは言わないし、やらない。滅多にモノに執着するようなことはしなかった。
その彼が変わったのが、9歳の時だ。あの時のことは河上もよく覚えている。
突然高杉家に現れた、土方。それは河上から見ても、この世とは思えぬほど可愛い子供だった。確かに高杉が心奪われるのも頷けるほど、土方は愛らしく庇護欲を駆り立てたのだ。
高杉はその日から、土方に掛かりきりになった。今までは適当に何事も流すように生きてきた高杉であったが、土方のことだけは違う。土方と同年のまた子に監視を命じ、彼の行動は逐一報告させた。土方を苛める者は、相手が例え5歳も年下の子供であるにも関わらず、徹底的に潰していく様に河上は呆れたものだ。その中で一人だけ高杉と対等に渡り合った子供がおり、河上が大層感心したのは余談である。(勿論、沖田だ)
このままでいいのだろうか?これほどまでに土方に執着しているが、彼は分かっているのか。土方とは決して結婚できない。男同士なのだから当たり前だ。
しかし、高杉は結婚しなければならない。どれだけそれを拒もうとも、それは通らないだろう。高杉がグループを引き継ぐなら、後継者を作るというのは避けて通れぬ義務だからだ。
高杉はこう見えて、恋愛面に対しては案外と不器用だ。遊びと割り切っているならまだしも、心に決めた相手がいるのに、違う相手と一生を共に誓うなど出来ぬであろう。例えばその相手がまた子あたりならまだ可能性もあるだろうが、恐らく彼女との結婚など不可能だ。高杉の結婚は、政略的意味合いが強い。よって父親がグループの幹部であるまた子が候補に選ばれることはまずあり得ないに違いない。
高杉は、そのことをちゃんと理解しているだろうか?
彼はあまりにも土方のことを愛しすぎている。それはきっと高杉にとって、弱みだ。
かといって、河上も土方のことは大層気に入っている。何しろ、自他とも認める面食いだ。だから無情に、土方を切り捨てることが出来ない。一層のこと、自分が彼をモノにしてしまえばいいのだろうが、そんなことをすれば高杉に確実に殺されるだろう。
だから、河上にとって銀時はちょうどいいカモだ。最初は河上も銀時の今までの遍歴を知っているだけに賛成などできようはずもなかったが、今現在の銀時を見て気が変わった。
銀時は本当に、以前の彼とは違う。土方のことを心から愛していることが、河上が見ていても伝わってくるのだ。
高杉は決して認めはしないだろう。それでも河上は銀時になら、土方を任せてもいいと思い始めていた。
とりあえず土方に今夜は開けておいてくれるように、廊下に出て連絡を入れる。
高杉には可哀想だが、土方のことは諦めてもらおう。



河上は、静かに携帯電話を折りたたんだ。




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posted by みゆ at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 陽だまりの君 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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